本気を出さずに成果を出してください

好成績を維持し続けるために…

世の中の”トップセールス”または”エース”と呼ばれる方たちに共通することは、その高い売上成績を長い期間維持していることにあります。周りから認められるためには、長い間常に売上成績が上位でなければならないのです。

表現の仕方が失礼であることは承知のうえで言いますが、たまたま大きな案件が取れた結果として、その期だけ売上成績が一番になったという方は周りから”トップセールス”または”エース”と呼ばれることはありません。

やはり常に高い売上成績を挙げていなければ、周囲にいる方々に認めてもらえることはないと言えるでしょう。野球に例えると【10打席で9三振して特大の1本塁打を打つ選手】と【10打席で2三振しても5安打とフェンスギリギリの3本塁打を打つ選手】がいたらどちらを”エース”として評価しますか?

特殊な事情が無い限り、明らかに後者が評価されます。それはビジネスの世界であっても、スポーツの世界でも同じです。”たまたま”では評価されにくいのです。

不思議なことにトップセールスと呼ばれる方々はその売上を維持するために、【いつも一番遅くまで残業している】【いつも土曜日や日曜日、祝日まで休まず働いている】【見込み客に金目のものを渡す】【契約を取るときにお願いをしている】【値下げに応じる】【顧客の特別扱いしてほしいというわがままに答える】といったことをしていないことが殆どです。

確かに一部例外はありますが、”トップセールス”と呼ばれる方達からは何か得体のしれない”余裕”を感じます。

そして、自分で仕事において”こういうことはしない”と決めているルールが必ず存在します。例えば”仕事は夕方6時まで”、”服装はスーツでなくリラックスできる服装で仕事をする”、”顧客もしくは見込み客の所へ行くときにパンフレットやカバンは持って行かない”、”土曜日と日曜日は絶対に休む”、”昼休みを削ってまで仕事をしない”等、多岐に渡りますが、一見すればそれらの決め事はどうやら営業活動をする側にとって”不利”なように見えます。

夜は遅くまで仕事をしていればいるほど量をこなせるように思えますし、服装だってビシッとしたスーツを着ていたほうが相手に与える印象が良いはずです。

訪問先で何か質問をされた時だって、手元にカバンやパンフレットを持っている方が回答するのには有利なはずだし、土曜日や日曜日は個人宅へ攻めいる時なのではないか?休んでいる場合ではないのではないでしょうか?

そんなことが許されるのは”天才”だから、”トップセールス”だからであって凡人の私にはできない…許されない…というのは間違いです。騙されてはいけません。

最高時速160kmを誇る自動車をアクセル全開の時速160kmで運転している人はいません。全力で走っていたら道中に『障害物』があっても避けることはできませんし、いざという時にスピードを上げて『トラブル』を回避することもできません。サッカー選手であっても試合中、常に全力で走ることはできません。

更に付け加えるのであれば、人間は機械ではないので、一生”本気”で一つの事だけに取り組むなんてことはできません。いずれ貴方が”トップセールス”になって好きなものを好きなだけ買えるようになれば、仕事へのモチベーションが落ちていきます。

”本気”であったが故に”トップセールス”の地位を築き上げたのだとすれば”モチベーションの低下”はそのまま当然のごとく”成績の低下”に繋がります。年齢についても同じことが言えます。体力があった時はあちこち駆けずり回り、所謂”足で稼ぐトップセールス”だったけど、加齢とともに体力が下がり活動量が減った結果”トップセールス”から陥落してしまったとすれば、それは若い時の仕事の仕方が悪かったというだけの話です。

ですから、”本気”を出して”トップセールス”になってはいけないのです。”トップセールス”は常に多方面から重圧がかかるものであり、それに答え続けなくてはならないものです。どこかの映画で聞いたことがありますが、『大いなる力は大いなる責任を伴う』という言葉のとおりです。

しかし、人間であっても機械であっても常に全力で走ると息切れや故障が発生します。そしていつの日かポキンと折れてしまいます。

セールスマンは超一流になったとしても、スポーツ選手のように1年間で何億、何十億とお金が入ってくる訳ではないので、長期的に好成績を目指さなくてはなくてはなりません。1,2年だけ日本一のプレイヤーになっても仕事を辞めることはできないので、どうせなら”長い間チヤホヤされるトップセールス”になってみませんか?

何よりも、お客様は”一瞬だけ強く光輝いている星”よりも、”長い間、周りの星よりも強く綺麗に輝いている星”を求めています。

どんなにいいサービス、作業をお客様へ提供できたとしても真っ先に潰れてしまっては、お客様を幸せにすることなんてできないとは考えられませんか。

とは言ったものの『本気を出さず、適当に力を抜いてください』と簡単に言われても難しいものですから、先述のとおり自分自身で自らにハンディキャップを課すことによって仕事を上手く回していくことが必要です。

そして、その自らで決定したハンディキャップを設けることこそが”モチベーションを上げること”や”休憩時間の創造”、”自らを見直すための時間を創造する”、”精神的にも肉体的にも余裕を持てる”、”他人との差別化”に繋がっているのです。仕事をこなすのに”100%本気”になってはいけません。私自身は通常期5割、繁忙期でもせいぜい6割~7割です。

トップセールスは”楽をしているように見える”のではありません。そのままズバリ”楽をしている”のです。

こと”トップセールス”と呼ばれる方達は、常に本気を出さないように自らに重りを課して調節しているからこそ、”何かトラブルがあった時”、”何をやっても上手くいかない時期”、”どうしてもあと1つ契約を獲らなければならないとき”に一時的にギアを上げるだけで問題を解決できるのです。

そもそも、如何なるトップセールスであっても営業活動において”本気”を出せば”絶対に契約をとれるような甘い国ではありません”し、今はそのような景気がいい時代でもありません。

セールスは対個人だろうが対法人だろうが相手は人間です。”余裕”のないセールスマン(セールスウーマン)ほど成果が上がりにくくなります。売る品物が高額になればなるほど、顧客は余裕のないセールスマン(セールスウーマン)から買うことを不安に感じてしまうのです。

これはセールスのご経験がある方であれば一度は抱く幻想ですが、”この子、作業の質は低いけど一生懸命やっているから買ってあげようというお客様が現れないかな”ということは殆ど現実に起こることはありません。

あわよくば見つかったとして契約まで到達しても、そこから質のいい紹介は生まれません。

第一にそのような”聖人を探すこと自体”に手間がかかり、高い成果をあげることができるようになるためにはいくら時間があっても足りません。

余裕がない人間は自分を信じることができません。自分を信じることができない人間は魅力が半減するのです。これは致命的です。

凄く極端な表現をすれば、セールスでも恋愛でも”全力でいっぱいいっぱいになって溺れかけている方”よりも”成果は出ていないが、私だって本気を出せばもっとできるんだと考えている方”の方が余裕が現れて魅力的になります。

ですから、いつも余裕を持つために、自らに対して最低でも3つは自らに『これはやらないぞ』というハンディキャップを課すことを推奨します。

私のお勧めは”日曜、祝日の訪問や接待は断ること”、”契約を獲るために個人的な資産を消費しないこと”、”家族や大切な人とのプライベートな約束を優先すること”です。